第13回:砂子塾長の熱血ドラテク持論

インストラクターとして、アマチュアからプロまで数多くのドライビングを見てきた砂子塾長の連載コラム。自身の持論をもとに、スキルアップを願う読者にエールを贈る。第13 回目はシュールな話題だけどクルマの中はキレやすくなる空間だけにくれぐれも不幸なことにならないように!

いきがるヤツは身のほど知らず

今年もハーバード大学で授賞式が執り行われたイグノーベル賞。毎年ユニーク過ぎる研究になごまされ(?)考えさせられる(?)。「そんな研究するヤツ、いるんか~い!」のオンパレード。まさに突っ込みどころ満載だ。

今年の物理学賞は「流体力学を使って、ネコは固体であると同時に液体であり得るか?」の研究。にゃんとも笑うしかない。液体は容器に応じて形を変える。ネコは変えられる… ので流体って…。確かに猫はふにゃふにゃしているけど…笑

意外にも日本はイグノーベル賞の常連国。お堅い日本の研究者からは想像もつかない。イグノーベル賞を過去に受賞した研究で興味深いものがあった。

ダンニング=クルーガー効果である。能力の低い人物が自らの容姿や発言・行動などについて、実際よりも高い評価を行ってしまう優越性の錯覚を生み出す認知バイアスのこと。

イグノーベル賞にしては、随分まともな(?)心理学研究である。その特徴は、

(1) 自身の能力が不足していることを認識できない。 

(2) 能力が不十分な程度を理解できない。

(3) 他者の能力を正確に把握できない。

(4) その能力について訓練を積んだ後であれば、自身の能力の欠如を認識できる… こと。

しかも、これが自動車の運転に顕著に表れるという。クルマの運転に関しては、一般公道で納得の場面にしばしば出くわした経験も多かろう。モータースポーツを経験した人であれば、自己能力は多少たりとも把握する機会となる。

しかし、自身のクルマを激しくチューニングした場合はクルマが速いのか自身が速いのか?不透明度が増す。

以前、このコラムでも自己評価『エフェカシー』について触れたのを憶えているだろうか?世間から思われる評価からズレることなく、少し上を目指せ、だ。

東名高速上で起きた悲惨な事故。石橋容疑者の馬鹿げた運転は今回だけではなかった。知人の証言では、座席を倒して足を伸ばして足でハンドル操作していたという。それも自慢気に…。妨害走行は数知れず、まさにダンニング=クルーガー効果。そして、にわかに流行始めた言葉『ロードレイジ』(山田英二ちゃうよ! 笑)

クルマに乗ってキレるヤツ。そもそも鉄の箱に守られた空間にいて、相手が見えない。多少の緊張を強いられて心理学者的には抜群のキレやすい環境であるとのこと。

以前、コラムで書いた『公的自己美意識』が大きく問われる。相手にどう思われるか?それこそ、ロードレイジから身を守る方法として刺青模様のアームカバーが販売されている。公的「怖い人ですよ」アピールか? 

何とも世知辛い世の中。免許証の交付や発行時にその人間の科学的資格審査が必要な時代が来るかもしれない。はて、あるいは自動運転でキレようともキレられないクルマが先か?

とある町の夕方渋滞時に映画『千と千尋の神隠し』の主題歌『いつも何時でも』をスピーカーで流した実験。その実験で、その時間帯の軽物損事故は減ったという。

人間とはいとも簡単に感情コントロールできる生き物でもある。サーキットラン前に聴きたいミュージックは? 『Bornto Be Wild』? これまたちょいと古いが、『汚れた英雄』?

レブ読者諸君!街中はくれぐれも…『千と千尋の神隠し』でお願いしたい。

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