第10回:砂子塾長の熱血ドラテク持論

インストラクターとして、アマチュアからプロまで数多くのドライビングを見てきた砂子塾長の連載コラム。自身の持論をもとに、スキルアップを願う読者にエールを贈る。第10 回目は『自己評価』について。苦手意識は百害あって一利なし!プラス思考が自身の可能性を広げると説く。

『苦手意識』をプラス思考に!

先日、TVCに通う21歳の若者から人生相談を受けた。その若者A君は将来、プロドライバーになりたいんだという。

そこでオレはA君に聞いた。「プロになれると思う?」A君は答える「ん~なりたいと思っているんですが… なれる確信はというと…」と、その回答は何とも自信なさ気だ。

思い起こせば30数年前。19歳で富士スピードウェイを独り走り始めたオレ。右も左も知らず、わからず、ただただブレーキを我慢すればいいくらいの知識しかなかった。

20歳で富士フレッシュマンレースにデビュー。雨のデビューレースは散々な結果だった。でも、そのとき、もうオレは自分のサインの練習を密かにしていた。そう、「必ずプロになって、これで飯を食うんだ」と決めていたんだ。

プロを目指す若者諸君にいう。「自分を信じられない、やり遂げる覚悟がない、突き進む覚悟がない、不確定な程度の想いならやめときなさい」プロフェッショナルになった人たちはその全員が「できる」と信じた人々だ。もちろん、自分を信じたからって、すべてが成功するわけではない。

信じて挫折する、壁にぶつかるのが大半だろう。これは心理学でも証明されている。目標を明確に立てることにより、自ずとその達成に向かって動いていく。
1年ごとでもいいので、「ここまで今年はやる!」といった、より具体的な目標を明確にすることでネゴシエーションを含めて自身のまわりも巻き込んでいく。

さて、今回は「自己評価」がテーマ。根拠なき自信というべきか、これを心理学用語で「エフィカシー」と呼ぶ。原語はself -efficacyで、「自己効力」や「自己可能感」といえばもっとわかりやすいか?

このエフィカシーは自分の現在の実力より少し上であることが、仕事であれスポーツであれ、よいとされている。このエフィカシーが低いと、つまり「オレはこんなもんだ」「そんなのできなくて当然だ」という心理が働いてしまう。逆に自分よりそのエフィカシーが少し高いヤツは、そのときに「あいつにできて自分にできないはずはない!」「できて当然だろう」となってくるのだ。もちろん、世間の平行バランスを逸したすっとん狂な自己評価やズレまくりの客観的評価は困りモノだけど…。

このエフィカシーと相関するのが「苦手意識」だ。よく聞く会話。「上司のBさん、オレ苦手なんだ~」「最終コーナー、オレ苦手なんだ~」そう、この苦手意識もエフィカシーを大いに下げていくのだ。

Bさんという上司が苦手なのでコミュニケーションを避ける。最終コーナーが苦手なので自分はそこが遅くて当たり前。こういった心理的作用が働いてしまい、何ひとつ得られない。

Bさんをなぜそう思うか? そこが自分の変えどころ!Bさんにより興味深く接することで、自分はワンランク変われるかもしれない。もし、そうなれば、仕事に取り組むモチベーションも高まるかもしれない。

最終コーナーは0.3秒縮められるワクワクポイント!もっともっとそこを精査して、研究したら、オレってもっと速くなっちゃう(笑)… そんな風に思えたら、やっぱり、いい結果が得られると思う。

苦手意識は自らの可能性をシャットアウトしてしまう。無駄にエフィカシーを下げる必要などないことを憶えてほしい。

TVCで教えるドライバーにいう。ダメ出しは、当たり前だけど直せば速くなるポイント。「うわ~ダメ出しもらった!うれしい~!だって、そこ直せば、もっと速くなっちゃうでしょ!」

苦手意識に変換して得などない。仕事、スポーツ、対人関係、すべてにおいてそうだ。嫌いだった上司を誘って今晩飲みにいこう。その懐の深さは、すでにエフィカシーを高めているかもしれない。くれぐれも、酔った勢いで口論になったりはしないようにね。

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