第51回:砂子塾長の熱血ドラテク持論

シュワちゃんことアーノルド・シュワルツェネッガーとシャロン・ストーンが主演の1990年公開のアメリカ映画「トータル・リコール」。

フィリップ・K・ディレックが1966年に発表した小説「追憶売ります」を映画化したSF映画である。

近未来が描かれたこの映画の中でキーとなるシーン。

シュワちゃん演ずるクエイドが電車内で見た広告「旅行の記憶を売ります。」

リコール社へと出向いたクエイドは「秘密諜報部員として火星を旅する」という記憶を選択し、夢の中でのパートナーの女性の顔を自分好みのモンタージュで選び、注射によって眠りにつく・・・。

脳内へ現実に起きたこととして夢や記憶をインプットするバーチャルトラベルはもはやそう遠い未来ではない。でも、そうなれば実際の旅行に行く人は激減し、美味しい料理や素晴らしい景色、そして様々な出会いも必要なくなる。

極端に言えば、彼女など作る必要すらない。

「トータル・リコール」のように自分好みの女性を彼女として選択し、その彼女の性格まで選択すれば喧嘩はおろか、何をしても怒らない設定にすれば良いのだから・・・笑

そう、もう服装や外見に気を使う必要も高級レストランの予約も必要ない。女性を口説くための努力などいらないのだ。こうなると少子化問題は急速に広がり、人類は破滅の道に・・・。

コロナ禍でリモートが広がり、ワイシャツの下はパンツ一丁で会議に出席。モニター越しの上半身だけで事足りる。外出もしなければ仕事終わりの居酒屋で一杯もない。経済は疲弊しPC画面だけが1人1台。もうこの症状はすでに始まっているかのようだ。

いづれにせよ、バーチャルトラベルやバーチャルsexは人間の生活や価値観を激変させてしまうことだろう。

昨年まで自身がBMW M4GT4で参戦していたブランパンGTアジアもこのコロナ禍で全戦が中止となり、主催者であるSROはバーチャルレースを開催し始めた。鈴鹿、モンツァ、ラグナセカ、スパ、そして最終戦・鈴鹿の全5戦で争い、Simレーサークラスとリアルレーサークラスの2レースが行われた。

リアルレーサーとは過去にGTアジアに参戦していた本物のドライバーでマシンカラーリングも当時のものが再現されている。使用ソフトはアセットコルサ・コンペティション。画面はド!がつくほどのスーパーリアルに描かれている。サーキットの気温、路温の設定からタイヤ内圧、様々なサスペンションや空力に至るまで全て実車で出切るセットは変更可能だ。

1回のピットが義務づけられ、その給油量や交換タイヤ内圧も設定しておくのだ。1昨年、GTRGT3でKCMGからGTアジアに参戦した谷口行規選手がTVCのSim筐体でバーチャルレース参戦した。

プラクティスからまさにリアルそのもの、細かなセットアップでタイムを削っていく。ピットに戻らなくてもキーボードのエスケイプボタンひとつでガレージに戻れる事やクラッシュしてもすぐに元通りであるのを除けば・・・。笑

正しレースとなるとそこはやはりバーチャル。スタートからの1コーナーはありえないほど躊躇なく皆さん接触してしまうのだ。

リアルとの大きな差異を感じたクラッシュや接触。そこに大きな感情はない。

「あ~ぁ!ぶつけちゃった~」くらいの軽い感情でしかない。

今後、サーキットライセンスやA級ライセンスなどの講習も全てシミュレーターがやる時代になっていくだろう。Simトレーニングではバトルのトレーニングも勿論可能だ。こういうミスを犯したときにストレートスピードが落ち、次のコーナーでインを挿される。そんな使い方なら大いに有効であろう。またSim単走でクラッシュするドライバーはリアルでもクラッシュするのが事実だ。

リアルとバーチャルの使い分けや使用方法を決して間違ってはいけない。

そして彼女を口説く際の努力も決して怠ってはならない。笑


※ この記事は2020年にRevspeedコラムで掲載された記事です
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   

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