第25回:砂子塾長の熱血ドラテク持論

高性能ドライビングシミュレーターによるトレーニングルーム『東京バーチャルサーキット』のインストラクターとしてアマチュアからプロまで数多くのドライビングを見てきた砂子塾長の連載コラム。今回は2018ブランパンGTアジアシリーズを振り返る。10年ぶりのレース復帰、初めてのFIA-GT4車両、初めてのサーキット。戸惑いだらけの環境を、どのように闘っていったのか?その実情を赤裸々に語る。

ブランパンGTアジア2018シーズンを終えて

2018ブランパンGTアジアシリーズ最終戦・中国寧波ラウンドが終了した。この春、自身は復帰を発表し、BMW M4 GT4のシェイクダウンでは確実な手応えは感じながらも、異国の地、国際レース、勝手が違うであろうブランパンシリーズに身構えた、自身のポテンシャルに対する興味が最高潮で迎えた4月の開幕戦マレーシアラウンド。

「オレはできる」。根拠ない自信は走り始めの数ラップで確証へと変わった。ただ、1年を通じて何かと我々を悩ませたのがピットタイムカウンター。レギュレーションで土曜日のレース1の結果が1位は15秒、2位は10秒、3位は5秒が、日曜日のレース2の通常のピットタイムに、サクセスペナルティとして加算されるのだ。

これはつまり、連勝はさせませんよ、できませんよということ。1時間のスプリントレースで15秒も止まるのはキツイ。チームは専用のタイムカウンターをコックピットに設置したが、GPSまわりの動作が安定しない。そこで人間力を酷使してピット入り口でストップウッチを作動… なんてこともしながら、このシステムと1年間格闘した。

もちろん、規定時間より早くピットエンドを出てしまえばペナルティ。序盤はこの精度に悩まされ、落としてしまったレースもあった。

第2ラウンドはタイ・ブリーラム。初めて滞在するタイは近国であるマレーシアとはだいぶ異なる印象。もちろん、初めてのサーキットはTVCで予習済みである。

結果はレース2で、まだ出たてのM4は灼熱の洗礼を受け、マイナートラブルでリタイア。このノーポイントは、のちにチャンピオン争いに大きく響くことになる。

迎えた日本ラウンド。鈴鹿・富士。勝手知ったるホームで4戦中3勝を挙げたが、多くのファンの来場はとてつもない喜び!でも「いつもの鈴鹿」「いつもの富士」ではなく、そこはなぜか同じ海外風情を不思議と感じた。

海外レースは仕事とはいえ、気分は『プチ旅行』。初めて見る景色にお国柄。以前も書いたが、交通マナーなどは国々での大きな差があり、とても興味深い。

日本で3勝を荒稼ぎして臨んだ上海。以前はクラクションの嵐だったそうだが、実際にはほとんど聴かない。なぜかと尋ねると「法による規制」で減らしたそうだ。

そんな上海では2位と優勝を獲得。当然ながら、シミュレーターは大いに武器となった。
その2週間後、再び上海からクルマで4時間の寧波サーキットへ。ここは昨年完成した1周4㎞の国際格式サーキットで、レイアウトが面白い。低速~中速なのだが、アップダウン、アンジュレーションと、休む時間を与えてくれない。

縁石も大きくインカットしないとタイムは出ない。初サーキットと初寧波の街。刺激がいっぱい。

中国の発展は続いているが、運転マナーは「ド」がつくほど悪い。日本でいう右直、つまり、左折と直進は交錯すれすれ、道に迷えば、そこらに停めてクルマを降りる…。

相手をおもんぱかる文化の欠落。しかし、道路整備は進み、街灯には風力・太陽光パネル。とはいえ、電動バイクは普通に逆走!このギャップに面食らう。郷に入れば郷に従うというが、そんなことできね~って!(笑)

ブランパンGTアジア初年度は残念ながらシリーズ2位で終えた。また、刺激的な1年は2019年4月からスタートする。来季こそBMW Team Studie M4 GT4とチャンピオンを獲得したい。

読者諸君も街中のドライビングは、くれぐれも相手をおもんぱかるようにしてくれたまえ!(笑)

Revspeedで毎月コラム掲載