BMW & MINI Racing【M2 CS Racing Series】岡山の陣!レポート

こんにちは、ダイワグループモータースポーツ【DGMS】
ドライバーの石井一輝です。

今回は9月24-25日 岡山国際サーキットで開催された
BMW&MINI RACING 2022 Rd.4の参戦レポートを投稿させていただきます。

●安定の雨
9/23日(金)朝
岡山国際サーキット入り。天気は聞くまでもなく、前日から雨!!
午前中のうちに止み土日も降らない、いつもの予報でした。

この日は30分2本のプラクティスというスケジュール。
朝一は完全ウエットのため、チェック走行1周のみで終了。
「ん-、足回りのセット変更を確認したいし、マイルも稼ぎたいのになぁ」と内心、もどかしい。

実は2週間前の岡山テストで、東風谷さんと僕とのタイム差が2秒も突き付けられ少しでも走りたいのに雨…

2本目は乾き始めの微妙な路面でしたが、朝一走れなかった分を取り戻す。しかし新品タイヤを履いても有益なデータを得るのは不可能だった為、急遽
2週間前に使ったスリック(累計300km以上!本来なら破棄するタイヤ)を履いてフルで走りきる事に!
前半10分はイマイチでしたが、後半はレコードラインがしっかりドライで走行出来ました。

タイヤや路面が悪いのは仕方ないとして、旋回時の挙動が前と比べて明らかに良くなったのが分かり、タイムも悪くない。
戦えるぞという手応えを感じながら初日の走行を終えました。

●とにかくプッシュだ!

夕飯を食べながら初日の振り返りと、翌日の予選に向けて毎回恒例、東風谷さんにメンタルをプッシュしてもらう会。
放送禁止用語は飛び交いませんが、なかなかきつく詰められます(笑)
僕の最大の弱点はメンタルの弱さであると言われ続けており、砂子塾にメンタルも鍛えてもらっています。

この日も予選前のプラクティスで新品タイヤを投入する事が決まっていたので、
「とにかく本気で攻めろ、死ぬ気でプッシュしろ!このセッション絶対にトップタイムで帰ってこい!
師匠の語気がいつも以上に強い。
タイトル争いや今後を考えると絶対に結果が欲しいし、僕も感じた手応えを結果に残さないといけないからだ。
いつも何かしらに不安を感じているが、明日は自分がやれるかどうかだけ、違ったプレッシャーを感じつつも
絶対にポール!よし!と声に出し、石井の背中を押す会は無事に幕を閉じた。

●流れは自分で作れ!

9/24日(土)
12:00~12:30のプラクティスと、16:20~16:40の予選というスケジュール。
まずは予定通り新品タイヤを使い、予選を想定して条件を整えてアタックに出ます。
この時の感触は思ったよりアンダーが強く、フロントが逃げていく印象でしたが、
タイムは1分42秒2でこれまでのベスト、全体でもトップタイムを記録しました。
「よしよし、まずはミッションひとつクリアだな。この調子でいこう。」
東風谷さんとの会話が極端に少ない事が、逆にとても順調である事を感じさせた。

残った時間でマシンをアジャストしてもらい、チェックや燃費計算も兼ねてチェッカーまで走りきります。
挙動は少し改善したものの、多分もっと根本のセット変更しないとこれ以上は良くならないと感じました。
後から他のドライバーさんと話す機会があり、皆さん同じところで苦労していたので、路面の影響も大きかったのかなと思っています。
予選も迫っているし、あとは運転でどうにかするしかないかなー、そんな事を考えながら走行を続けていると、当然コース上でライバル達に出くわします。
「もう始まってんぞ、プッシュしろ!ダラダラ走るな!」と無線が飛んできます。
その通りだ、今出来なきゃレースで何も出来るはずがない。
全力で前を追い、決勝想定のタイヤの落ちやラップタイムの推移など、いい練習とデータ収集が出来ました。

●初ポールポジション

いよいよ予選の時間が迫ってきて、緊張感も高まってきます。
どのタイミングで何周アタックして、内圧どこ狙って、いつも通りメカさんと東風谷さんとプランを最終確認。
午後の空いた時間で併催のFANATEC GT WARLD CHALLENGE ASIA JAPAN CUP Rd.4 by AWS(過去最長w)を各コーナーで見て、少しでも苦手だなと思うポイントのおさらいもしたので、イメージばっちりである。

プラクティスでタイヤのウォームアップを少し失敗した感があったので、反省を踏まえつつ感触を確かめてからアタック開始!
連続2周の計測で1分41秒7を記録、自己ベストを0.5秒更新。
事前の約束で翌日のレースも考慮して2周のみアタックと決めていたので、ピットに戻る事を無線で伝えると…
「トップと0.18秒差の2位だ、燃料が足りるならあと1周行ってこい!」と東風谷さんから驚きの言葉が出た。
当たり前の事ですが、自分の決めた一番良いタイミングでベストを出せ。チャンスが何度もあると思ってダラダラ走るな。
この鉄の掟を念頭にTVCでもどこでもトレーニングしてきましたが師匠からの意外な一言。
師匠の一言に僕は奮い立ちました。
「やりましょう!!!!」

一周マシンと自分をクールダウンして、時間もガソリンもぎりぎり、ラストアタック。
いつも気合いでやり過ぎるので、とにかく落ち着け、大丈夫だと唱えながら走りました。
タイヤの落ちよりも路面が良くなっているように感じ、自分でも良い調子だと思っているところに
「セク1ベスト」、「セク2ベスト」という無線が飛び、アドレナリンが溢れます。
最終セクターもミスなくまとめてコントロールラインを通過、1分41秒205!

さらに0.5秒ベスト更新して叫んだ。
「どうよ!!!!!!」
「お前がポールポジションだよ、良くやった」
初めて自分で納得のいく走りができ、結果に結びつきました。
しかも85psのパワー差を跳ねのけての初ポール、本当に最高の気分でした。
師匠にも褒められてちょっと泣いた。

掴みかけたポール・トゥ・ウィン

9/25日(日)
すっきりとした青空に気温・路温も上がり、10:35からレース1が行われました。
初めて自分の手で掴んだグリッドの最前列に並ぶと、自然と気合が入る。
スタート順は365ps(僕)、450ps、330ps、365ps、365psの順番。

やれる事はすべてやる、そして勝つんだと強く自分に言い聞かせてスタート!
しかし蹴り出しが悪く、パワー差も相まって1コーナーまでであっという間に2位に転落。
そこからはなんとか食らいつきますがコーナーで追いつきストレートで離される、予想通りの展開。
離されたら終わりなので、無我夢中で追いかけてプレッシャーをかけ続けました。
チャンスを待っていると、9周目のバックマーカー処理の隙をついてトップへ!
心の中でガッツポーズしつつ、深く深呼吸をして予選の時同様落ち着きを取り戻します。
あとは残り時間が気になって仕方ないので無線で確認しつつ、ひたすら全力で逃げるだけ!
とはいえストレートで15km/h以上速いマシンを抑え込むのは簡単ではありませんでした。
11周目に再び抜き返されてしまい、0.6秒差の2位でチェッカーを受けました。

2位が確定した瞬間から涙があふれ、爆発しそうな負けた悔しさにどうしたらいいのか分からなくなってしまいました。
一瞬でも掴みかけた勝ちがすり抜けていく感覚と、何より、レース1で勝ちたいとずっと思っていたからです。
振り返ればレース運びが下手でタイヤマネジメントも出来ず自滅しただけなのですが、この時はただただ打ちのめされていました。
泣きすぎてこのままヘルメットかぶってていいですかと思いつつ、駆け付けてくれたチームのみんなと声を交わし表彰台に上がると、生まれてはじめてのシャンパンファイトが待っていました。
こりゃあ勝って浴びたかったなーって心底思いましたが、そんなに甘くはありませんね。

しかもこれで終わりではありません、まだレース2が残っています。
気持ちを切り替えて、次どうすべきかをチームで話し合いました。

●リベンジならず

16:25からレース2が行われました。
上位3台がリバースグリッドのため、今度は330ps、365ps(僕)、450psの順にスタート。

今度はまずまずのスタートで、2位をキープしたまま1コーナーを抜けます。
その直後1周目のバックストレートでトップに躍り出て、レース1同様とにかく逃げる作戦!
しかしレース1より路温が高く、内圧上昇により新品タイヤの良さを活かしきれません。
終始アンダー気味でペースを上げられず、3周目にはさくっと450psのマシンに抜かれてしまいます。
相手もレース2本目なのでペースも良いし大きなミスもない。ジリジリと離されていく苦しいレースが続き、
そこからはあまり出来る事もなく2戦連続の2位フィニッシュとなりました。

レース1のような戦いが出来ず、また違った悔しさが自分の中に渦巻きました。
前よりも良くなってなきゃいけないのに、なんてザマなんだと。
少し違ったのは、悔しいから次こそ絶対勝ってやろうと前向きな気持ちがすぐ湧いたこと。

●残るはあと1戦鈴鹿!


今回は笑って泣いて、泣いて泣いて少し笑った、そんなレースウィークでした。
これまでにないベストな予選アタックと、とても自信を持ってマシンを操れたことが非常にポジティブな収穫です。
ただ負けて泣いて帰ってきたわけではなく、またひとつ上にいけるキッカケをもらったと思えば、良い週末だったでしょうか。
この悔しさや得た感覚を忘れずに、TVCで練習を重ねて最終戦の鈴鹿に挑みたいと思います。
チームのみんなと、東風谷さんと笑ってシーズンを終わりたい。来年に繋げたい。

また次回、応援よろしくお願いします!!