【砂子塾生レースデビュー!FCR-VITA参戦記】「レースなんて、自分にはまだ早いと思っていた」

初めて乗ったVITAは別世界だった。
FCR-VITA レースデビューレポート 小林 史 卓 様
【VITAに挑戦】
私がVITA01というレーシングカーに乗り始めたのは約2年前。
当時はレクサスRCFでスポーツ走行を始めて5年ほど経っていましたが、「VITAを極めれば運転が変わるよ」という言葉をきっかけに、VITAに挑戦することになりました。
初めて乗ったVITAは、それまで乗っていた重量級の市販車とはまるで別物でした。
車重は約600kg。
ハンドリングは非常にクイックで、ブレーキングや荷重移動、アクセル操作の精度がそのままクルマの動きに出る。
高速コーナーでは、アクセルを少し戻すだけでノーズが入り、立ち上がりで雑なアクセル操作をすると簡単にスピンする。
最初はイン巻きスピンばかり。
ラップタイムも2分8秒台からのスタート。
それでも、
「これを乗りこなせたら絶対楽しい」
と思ってしまったのが始まりでした。
その後、環境の変化もあり、練習方法を見直すタイミングがありました。
塾生の長谷川さんに勧められ、砂子塾の広場トレーニングを見学。
そこで初めて、「限界域を理解しながら練習する」という考え方に触れました。
【砂子塾とTVCで変わったこと】
それまでの自分は、
「走って、感覚で修正する」
という練習が中心でした。
一方、砂子塾とTVCでは、
・ブレーキ液圧
・車速
・ボトムスピード
・走行ライン
などをデータとして可視化し、
「なぜ遅いのか」
を整理していきます。
自分の場合、一番大きな課題はブレーキングでした。
特にシフトダウン時、
ヒール&トゥをするとブレーキ液圧が乱れ、止まりきれず、結果的にコーナーでオーバースピードになる。
そこから踏み足しが発生し、
ボトムスピードが落ち、全開時間も減る。
まずはそこを徹底的に修正しました。
TVCでは、もてぎのようなストップ&ゴー区間を繰り返し練習。
同時に富士本コースも走り込みました。
ある日、塾長から言われた一言が印象に残っています。
「ヒール&トゥって、実際は“トゥ&エッジ”だよね」
つま先でしっかりブレーキを踏み、
アクセルは足の端で軽く触れる程度。
その意識に変わったことで、
ブレーキに集中できるようになり、
液圧の乱れも徐々に減っていきました。
そこから本コースでの走りも変わっていきます。
「早く全開にしたいなら、まず曲げ終える」
その意識を持つことで、
ターンインからクリップまでの操作も丁寧になりました。
気付けばラップタイムは2分1秒台へ。
VITAのトップ層とはまだ差があります。
それでも、最初の頃の自分を思えば大きな変化でした。
【レースなんて、自分にはまだ早いと思っていた】
当初、レースに出るつもりは全くありませんでした。
むしろ、
「富士で2分切れたら卒業かな」
くらいに思っていました。
東風谷さんや塾長からは、
「安全に周囲を見ながら、安定して走れること」
を常に言われていましたし、自分自身、
レースを走れるレベルではないと思っていました。
レース映像で見る、
1コーナーへ何台も並んで飛び込んでいく光景。
正直、「怖い」
という気持ちの方が大きかったです。
ただ、練習を重ねる中で少しずつ感覚が変わっていきました。
ある日の富士スポーツ走行S4枠での事。
前方にいた“初音ミク号”がとにかく速い。
「なんとか付いていきたい」
そう思いながら必死で食らいついていきました。
ストレートで少し近づき、
セクター2〜3で離される。
また追いつき、
また離される。
走行後に聞くと、
かなり経験豊富なドライバーだったと知ります。
その時、
「見た目や名前だけで勝手に速さを決めつけていた」
事にも気付かされました。
派手なカラーリング。
有名チームの車両。
速そうな雰囲気。
そういうものを見るだけで、
自分から無意識に引いてしまっていた。
でも東風谷さんから、
「周囲を見て、急な動きさえしなければ大丈夫。速い人は勝手に抜いていくから、自信を持って走ればいい」
と言われ、少しずつ考え方も変わっていきました。


また別の日。
富士スピードウェイでの練習後、
あるメカニックさんから、
「ヘアピンで走りを見てたよ。かなり上手くなったね。そろそろレース出てみたら?」
と声を掛けてもらいました。
自分ではまだまだと思っていましたが、
周囲は少しずつ変化を見てくれていたようでした。
さらに別の日には、
ベテランドライバーの方からも、
「かなり走りが変わったね」
と声を掛けてもらうこともありました。
そういった言葉が、
少しずつ「レースに出てみたい」という気持ちに変わっていった気がします。
【そして、レースへ】
2026年5月開幕戦
富士チャンピオンレース FCR-VITAクラスへ初参戦。
エントリー35台。
予選20分。
決勝10Lap。
普段のスポーツ走行とは空気がまるで違いました。
誰も譲らない。
全員が全力。
スリップを使い、
位置を取り合い、
常に周囲にクルマがいる。
今まで経験したことのない緊張感でした。

そして決勝。
29番グリッド。
シグナルブラックアウト。
……そこから先は、正直あまり記憶がありません。(笑)
ただ、
無我夢中で走っていました。
抜かれ、
抜き返し、
周囲を見ながら、
接触だけは避ける。
気付けばチェッカー。
結果は31位。
チェッカーを受けた瞬間の安心感は、
今でも忘れられません。
「無事完走おめでとう!!!ノーコンタクト・ノーペナルティ 初レースにしては上出来!!!」
会う人会う人が、
口を揃えてそう声を掛けてくれました。
素直にうれしい。
そして、
めちゃくちゃ楽しかった。
もちろん悔しさもありました。
「あそこでもっと行けたかもしれない」
「もっと攻められたかもしれない」
そんな感情も含めて、
レースには、実際に出た人にしか分からない世界がありました。
怖かったけど、
出て良かった。
今はそう思っています。
そして最後に。
初レース、
本当にぶつけなくて良かったです。(笑)
今回の経験を踏まえて次回走るときが今から楽しみです。


Special Thanks
Photo by Wataru Tamura
