第42回:砂子塾長の熱血ドラテク持論

雑学からのヒント

「男には下手だと認めたくないものがふたつある。それはクルマの運転とセックスだ」こちら、サーの栄誉称号を授かった伝説のドライバー、スターリング・モスの名言だ。享年90歳。

裏を返せば、「男には誉められるとメッチャうれしい、ふたつのことがある。それはクルマの運転とセックスだ」(笑)

たびたび話題に上がるドライビングと床テクニックの関連性。絶滅しつつあるМTシフト。操作が滑らかなヤツとグリグリ粗雑な操作をするヤツとでは「あっちもそうかな?」と、想像を掻き立てられる。

素早過ぎず、わずかなシンクロタイミングを図って入れる(笑)。シフト操作には芸術的エロをも感じる?また周囲の空気感をかえりみない運転、弱者である歩行者や自転車への気遣いのなさ、運転すると性格豹変……。

たしかに男を知るうえで、クルマの運転は、内面や所作を垣間見ることができ、わかりやすいものかもしれない。

さて、自分さえよければ、ドライブはベッドでも同じ?なのだろうか?

前述の理論が正しければ、レーシングドライバーは皆「あっち」も上手い?(笑) 断言しておこう。この業界で
30数年……いろんなドライバーを知っている(やったわけではないよ)。「そんなこたぁーない!」(笑) ただ、モス様の名言は男の感情として間違いないものだろう。

現代の調査(そんなんしてるんかい!)では、7割の女性が「クルマの運転とエッチの関連性はない」と答えている。サー・スターリング・モスの
面白ろ名言だけをピックアップしてはならない。

かのエンツォ・フェラーリに「君が必要だ。何でも欲しいクルマをいってくれ、6ヶ月でそれを用意しよう」とまでいわせたドライバー、モス。

もうひとつの名言「外国のクルマで勝利するよりイギリスのクルマで栄誉ある敗北のほうがいい……」勝てるクルマに乗りたいのがレーシングドライバー。ときは戦後間もなく。勝つ以上のアイデンティティが母国愛だったのかもしれない。

もうひとつの日本に関係大アリの話。1964年、当時建設中の富士スピードウェイのアドバイザーとして、モスは来日した。当初はNASCARなどと同じく、オーバルトラックを計画していたのだが、山麓の傾斜地である富士の現場を見て、「こんな地形でオーバルなど、甚だナンセンス。すぐにヨーロッパ型のロードトラックに変更すべし!」と、計画を一掃したという。

モスのひとことで日本のモーターレーシングの方向性は変わったのだ。もちろん、話したこともない偉人。彼の考えるドライビング理論や現代のレースとそれを取り巻く環境、レーシングシミュレーターの効果についても、モス様に聞いてみたかった。

そして、3月29日に日本中を震撼させた悲報、志村けんさん。我々世代としては『神』レベルの笑いの基盤。死後、さまざまな番組で紹介された、いままで知らなかった付き人苦労時代。

高校3年生の卒業を待たずにドリフタ―ズの付き人となった志村さん。あるとき、イベントへの寝台車移動で自身のベッドの上に大切に置かれた楽器。先輩の付き人に、「あの~自分の寝るところは?」と聞いたら怒鳴られた。

「もし、楽器が盗まれたらどうするんだ!」「おまえ!寝ようとでも思っているのか!」

寝台特急の曇った窓に立ち尽くしながら志村さんは指で書いた。

「い・ま・に・み・て・ろ・よ」

時は流れ、昭和を代表する大スターとなった志村さん。
「芝居に見えたらダメ」
「ホントにバカだと思わせる」すべては計算し尽された笑い。『8時だよ全員集合』のコントミーティングは深夜にまでおよんだという。

時代をも変革した偉人、先人に学び、雑学を知る。人生や生きざまのヒントはそこら中に転がっている。

Revspeedで毎月コラム掲載