第29回:砂子塾長の熱血ドラテク持論

高性能ドライビングシミュレーターによるトレーニングルーム『東京バーチャルサーキット』に加え、『砂子塾』と銘打つ富士P2や筑波ジムカーナ場での広場トレーニングで多くのドライバーを教える砂子塾長の連載コラム。2019 年もブランパンGT アジアシリーズに参戦予定今回のテーマは『欲求はモチベーションにつながる』

第29回:砂子塾長の熱血ドラテク持論

努力するのではなく夢を追い掛けてみろ!

ひさしぶりのスーパーGTへの参戦。

パドックに到着したが、チームもマシンも見当たらない。パドック中を走って探すがやっぱり見当たらない…
もう予選は始まっている。各車爆音とともにコースイン。

ヤバイ!
早くせねば!
どこだ、マシンは!?

そこへ声がする。「砂子ちゃん!こっち!こっち!」そこには友人のタジ(元レーサー田嶋栄一)がいた。タジに導かれパドック裏手に行くと、そこには綺麗で大きな黒毛和牛(オレにはそう見えた)が1頭!

「えっ!!これ!?」

その牛の角にはスロットルが装着されている!(笑)。とにかく慌ててヘルメットを被り、その牛にまたがった!コースインゲートへ行くと、柵は閉められ、予選終了を告げるチェッカーフラッグが…

「あー、やってもーた〜」

これ最近のオレが見た、寝てるときに見た『夢』(笑)。皆さん、寝てるときのじゃなくて、

夢は持っていますか?

成功者が口癖のようにいう「思えば必ず夢は叶う」。んなわけねーだろ!だいたいみんなが夢追い掛けた日にゃ社会も国家も破綻や!でも、少しの夢、夢というより希望的欲求があって日々生きたほうが、絶対楽しい。

「仕事やっつけて週末はたらふく飲んでやる!」みたいな小さな欲求。その欲求こそがモチベーション。大きな夢でなくていい。

スケールが違い過ぎる話だが、1969年7月20日のこと。アポロ11号計画の船長ニール・アームストロングとオルドリンのふたりが人類史上初の月面着陸をした日。『ファーストマン』と呼ばれたアームストロング船長の月面に降りたときの名言「これはひとりの人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」。

まさに人類の夢が叶ったのだが、NASAはあらかじめオルドリンではなく、アームストロング船長にファーストマンとなるよう指示していたという。訓練中に仲間を失い、また自らもテストフライト中にあと1.5秒脱出が遅れていたら死亡していた事故も経験した冷静沈着なアイスマン。愚直に任務を遂行する船長にとって、夢叶う瞬間ではなく、現実の任務遂行であった。

また『夢』は選択でもある。スティーブ・マックイーンとダスティン・ホフマンの名優ふたりが演じた秀作映画『パピヨン』。無実の罪で南米ギアナ刑務所に収監されたマックイーン演じるパピヨン。そこで出会ったホフマン演じるディガ。「ここから出られるはずはない」。何度も脱獄を繰り返したパピヨンとそれを幇助したディガ、ふたりとも最後は絶海の孤島へと島流しに。

いつしか髪は真っ白に年老いたふたり。しかしパピヨンは諦めなかった。ディガはこの島での暮らしにささやかな安住の地を見出そうとしていた。パピヨンは木の実でつくったイカダで大海原へと脱出する。そのふたりが岸壁で抱き合う別れのシーン。

どちらの生き方が楽なのか?そして険しいのか?対照的な生き方と選択をしたふたり。最後には自由という『夢』をつかんだパピヨン。イカダに乗ったパピヨンが叫ぶ「ざまぁーみろ!俺はまだ生きてるぜ!」

読者諸君の夢はなんだろう?週末、アドレナリン欲しさにサーキット通う?草レースに出てみたい?もっともっと速くなりたい?やっぱり夢、すなわち欲求はモチベーションになる。

一生懸命働く。もちろんお金のため?労働に夢があればなおよし。人に夢を与えられる労働もなおよし。せっかくクルマや走りが好きなんだったら『レース』という決して遠くなく、夢でもない世界を見てみよう。

何もJAF公認レースじゃなくても、レッドシグナル、そしてブラックアウト!その瞬間に湧き出るアドレナリンは、決して夢などではない。楽しいクルマ仲間と遊んでいたら、気づいたらレースに出るはめに、というのだっていいじゃない。

好きは、夢中にさせる。それは決して、努力なんかじゃないって!

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