第27回:砂子塾長の熱血ドラテク持論

高性能ドライビングシミュレーターによるトレーニングルーム『東京バーチャルサーキット』のインストラクターとしてアマチュアからプロまで数多くのドライビングを見てきた砂子塾長の連載コラム。2018年はブランパンGTアジアシリーズにBMW M4 GT4で参戦(シリーズ2位)10年ぶりの現役復帰となったが、2019年も引続き、このレースに参戦するようだ。今回は「高齢になっても運転を楽しみたい人」へのアドバイス。

認知機能を若く保つために身体機能を高めておきたい

『人生50年』フレーズとしてよく聞く台詞。織田信長の時代の平均的な寿命を表すものと勘違いされているが、本来、この台詞は、「人間五十年、下天の内を比ぶれば、夢幻の如くなり」であり、訳せば、「人の世の50年間など天界の時間と比べれば、夢幻のように儚いもの」となる。

平敦盛の詞章で、織田信長がこの節を好んで演じたといわれている。実際の寿命データでは、1891年当時(最も古い寿命データ)で、男性42.8 歳、女性44.3 歳… 若!(鬼汗)
 
54歳まで元気に生きて来られたオイラはどんだけ幸せなんじゃ!衣食住や医療の進歩が現代の平均寿命、男性81.09歳・女性87.26歳(2017年)へと急速に引き上げた。そして、政府指針は『人生100年計画』だ。まだまだ先は長く… 厳しい人生… なのだろうか?(笑)

先日、富士スピードウェイで催されたレジェンドカップ。文字どおり60年代から80年代に活躍したレジェンドドライバーによるVITAのワンメイクレースだった。

本誌でコラムを書く、中谷明彦さんはいちばんの若手!高橋国光、黒沢元治、鮒子田寛、関谷正徳、中嶋悟、桑島正美、見崎清志(敬省略)… といった大先輩たちによる競演レース。たまたま富士チャンピオンレースの弟子の応援のために富士にいたオイラもひさしぶりにピットで「ペコペコ」と頭を下げてご挨拶するハメとなった(笑)。

61歳中谷さんは激若手。ほとんどが70歳以上で最高齢は多賀さんの84歳。そりゃ見てるだけで冷や冷や!それほど車速が出ないVITAとはいえ、オープンのフルフェイスはさすがに観ているオイラが緊張する。

決勝は中谷さんのブッチ切り。中嶋 VS関谷! 国光 VS黒沢!といった、往年のファンにはたまらないシーンも多数あり、大いにファンを沸かせた。

さて、これを観ていて思ったのは、大筋で高齢になったら速さは年齢で決まる?やはり若いモン順になったのだが、これは当たり前と見るべきか、それとも…。

速い若手の中谷さんでVITAトップランカーの3秒落ち。おじいちゃんたちは10秒も何10秒も遅い。しかし、70歳や80歳でレーシングカーを動かしているだけでも、そりゃ凄いわけで…、微笑ましくも現実とのギャップを感じさせられた。

皆、口々に「もう乗ってないから ……」とおっしゃる。そりゃそうだ。毎日レースカーに乗るオジイがいるはずもなく、皆さん、おひさしぶりなわけですから。東京バーチャルサーキットのお客様にはいう。

「できれば毎日クルマに乗ってください」と。

話し変わって、紀平梨花選手がロシアのザギトワ選手を破って女子フィギアスケート・グランプリファイナルで優勝したが、紀平選手は歳でジュニアからシニアへとクラスを変更している。16 歳でシニアって(汗)。

モータースポーツは数あるスポーツの中でもフィジカル要素が他に比べて影響されにくい。もちろん、フォーミュラやGTカーともなれば、そうはいかぬが、チューニングカーレベルであれば関係性は希薄だ。

一方で、高齢者における認知機能と身体機能は関連するといわれている。すなわち身体機能を若く保持することは認知機能をも若く保つことにつながる。ドライブ中の最重要事項が視覚情報からの認知能力であることは、いまさら語る必要もない。

40代以上のTVCのお客さんには「つねに 体を動かし、スポーツをしてください 」と、しつこくいっている。 体を動かし『脳』を鍛える。2018年のノーベル医学・生理学 で、がん免疫治療 『オプチーボ』の開発につなげた京大特別教授の本庶氏が受賞したのは先日のニュース。

ますます、人生100年の実現が近づく。85歳のトライアスロン選手だって実在する。オイラは波乗りしたい… って、レースじゃなくて、そっちか!(笑)

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