第20回:砂子塾長の熱血ドラテク持論

高性能ドライビングシミュレーターによるトレーニングルーム『東京バーチャルサーキット』のインストラクターとしてアマチュアからプロまで数多くのドライビングを見てきた砂子塾長が今季は10 年ぶりに現役復帰!
ブランパンGT アジアシリーズにチームスタディBMW よりM4 GT4 で参戦中6月の富士SUPER TEC でもENDLESS GT-R のステアリングを握る今回はブランパンGT アジアのタイラウンド(レース外)レポートだ。

素晴らしきタイの国民性

ブランパンGTアジア・タイラウンドを終えて帰国した。初めてのタイ、そしてブリーラム・チャンインターナショナルサーキット。日曜日のレース2には、3万人近くの多くのファンでグランドスタンドは埋め尽くされた。みんな口々に「スーパーGTのときより凄い!」という。

そして、ピットウォークが始まれば、タイ人のモータースポーツファンでピットレーンはごったがえした。しっかり順番を守り、みんなが一緒に写真をお願いされる。そして撮り終ると、胸の前で両手を合わせ、「コップンカ~」という。ありがとうの意味だ。女性は意外にもグイグイ顔を近づけたり、腕や肩に手をまわしたりしてくる(笑)。積極的!?

この手を合わせての「コップンカ~」は滞在中のレストラン、ホテルなど、どこでも聞く。それはすべて笑顔という表現より「微笑み」がマッチする。そう、「コップンカー」と「微笑み」はもれなくセットなのである。

微笑みの国、タイ。ブランパンGTアジアは、マレーシア、タイ、中国ラウンドがあり、各国の文化や一般公道の走り方、クルマ文化などなど、とても興味深い。

タイは子供の頃から怒らない教育。怒ったら言葉を発する前に10秒考えること。これが慣わし。怒らない背景には教育が重要なのだ。

バンコク市内の鬼渋滞はもはや名物ともいえる。混雑なんてもんじゃない!日本人ならみんながイライラ。横入りしようものなら寄せる、クラクション鳴らす、が日常光景だが、バンコク市内はクラクションなどほとんどない。

クラクション騒音は民度の低さを示すともいわれているが、じつに静かな渋滞なのだ。大通りを走れば、急ぎたい人は勝手に抜いていくし、煽りも、またそれを閉めようともしない。これは運転スキルではなく、民度や微笑みの国民性であろう。

それでいて、人気スポーツはムエタイ、サッカー、モーターレーシングと来るわけで、タイが大好きにもなってしまう。

もうひとつの言葉「マイペンライ!」沖縄弁なら「なんくるないさぁ~」は、大丈夫!何とかなる!みたいな意味。とある日本人観光客が街中でタイの人にクルマをぶつけられて……「マイペンライ!」いやいや、そりゃ困る!

国民性と教育でクルマのドライビングが変わるのは、以前、ドライブ中の音楽でも影響することをこのコラムでも述べたが、相関性ありである。

では、レーシングドライバーに適した国民性とは?(笑)いちばん大事なのは「闘争心」だ。これはスポーツ、ゲーム、レースのスタート時にスイッチONできる人であればよいのだが、アマチェアレーサーにコースイン後なかなかスイッチが入らない状態が多く見られるのも確か。

国民性というより人種の話になるが、目の色でいうならブルーアイはとくに夜間は優れている。黒い瞳ではブルーに比べて夜見えるはずはない。

人類の歴史においては狩猟民族と農耕民族に対分される。その日暮らしの狩猟に対し、農耕は計算ができ、たとえれば耐久レースか。狩猟はいうまでもなくスプリント向き?(笑)

考えれば白色人種は産業革命以降、侵略・戦争・植民地化を随分とやってきた。やはりレース向きなのか?いやいや日本人とて国内では戦国時代なんて表記があるほど戦をしてきている。これに関しては相関性なしか?

これも以前コラムで述べたが、「親の運転が影響する」も教育と同じ類いで、それが「普通のドライビング」であると、子供心に植えつけられる。いずれにせよ、一般公道でのドライビングは「コップンカ~」with微笑みで!と願いたいものだ。

ブランパンGTアジア・タイラウンドは、とても厳しい不甲斐ないレースとなった。こればかりは「マイペンライ~」では済まされない(汗)

 

 

【砂子塾長】
F3、JSS、N1耐久、スーパー耐久、全日本 GT選手権などで活躍し、引退後の現在は高性能ドライビングシミュレーターを擁する『東京バーチャルサーキット』でインストラクターを務める。陸・海・空と、さまざまなエクストリームスポーツに挑むアスリートでもある。

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