第12回:砂子塾長の熱血ドラテク持論

インストラクターとして、アマチュアからプロまで数多くのドライビングを見てきた砂子塾長の連載コラム。自身の持論をもとに、スキルアップを願う読者にエールを贈る。第12 回目は良書の感想文だけど箍(タガ)を外すこと、実直に好きなることで得る素敵な未来について説く。

箍(タガ)を外せ!実直に好きになれ!

明石家さんま原作の本。芸術家として名を馳せたお笑い芸人ジミー大西を描いた『Jimmy 』。ここ最近読んだ本の中で1冊を1日で読みきる自己読破スピード記録の大好きな『逸冊』だ。

さんまとジミーの出会いは強烈だった。難波花月の楽屋廊下。全裸で男の大事な『あそこ』を縛り、廊下の手すりに括りつけていた男。その変人いや変態男のまわりは、あっという間に笑いと怒号がおりなす異常空間となり、人山の黒だかりができた。その変態男こそジミー大西その人だった。

当時のジミーは吉本入りたての新人。聞けばボタン師匠に怒られ、反省しとけ!といわれ、猛省の意を体現した行為だった。楽屋裏廊下は当たり前の騒然というか、事件だ。「おまえアホか・・・」さんまを始め多くの先輩芸人に笑いと呆れを同時にばら撒いたのだった。

その出会いから、ジミーはさんま!どこにいてもさんま師匠!寝ても冷めても滑っても、さんまさん。とことんウザがられてもついていった…。

芸能人が描いた絵をオークションに掛ける番組で、その才能が開花する。もともとはジミーの絵は最後のオチ。ところが…「なんじゃこりゃ~~~」のオチで用意したはずの彼の絵は高い評価を得て、いちばんの高値で落札された。さらに、放映後、ジミーのところには一通の手紙が…。差出人はあの岡本太郎。

「ジミー大西くん。素晴らしい」

「キャンバスをはみ出して描いてください」

もともと絵が好きで、大尊敬していた岡本太郎先生がたまたまテレビを観て、感動して手紙までくれたのだった。それから事態は一転。とりまく環境も一挙に変わり、彼は画家、アーティストとしての活動が主となっていく。

さんまに聞かれる。

「おまえ絵好きか?」

 ジミーは答える。

「だいっきらいです~」

「だって絵描きおったら、もう、何も、お笑いのことも、さんま師匠のことも、何も他のこと頭にないんです…」

 さんまはいった。

「おまえアホか!それが好きっちゅ~ことやねん!」

おバカで、ある意味動物のようなジミーちゃんの半生。「箍(たが)を外す」は規律や呪縛から外れて羽目を外すことをいう。皆、それぞれに自分の中で「オレ、こんなもんだ」と枠・箍をつくり、踏み外さない人生を歩もうとする。もちろん、それでいい。多くを望まず、堅実に……。ビジネスとて同じ、ローリスク・ローリターンと相反するハイリスク・ハイリターン。

ジミーの人生にもうひとつ長けた点は「実直に好きになる」だ。これまた映画『フォレスト・ガンプ』の主人公ガンプに共通した点であろう。

レース業界の2大ビッグネーム星野一義・中嶋悟。ふたりとも、いまでも雪が舞う夜は走りに行くのだと…。どれだけ好きなんだ?でも、逆の目線では「それほど好きじゃないんだね? キミたち」といわれているようでもある。

一般的に常道を外したとも思えるくらいがちょうどいい。そんなときに、自身の小さなプライドや常識なるものが邪魔をする。誰だって劣等感や孤独感を持ち合わせている。完璧な奴なんていない。

恋愛・仕事・遊び・人生。『Jimmy 』の逸冊、いや、ジミーの人生はヒントの宝庫だと思う。

誰も股間を露出し、はめを外せとはいっていない。だが、「箍を外す」「実直に好きになる」そして、他人を嫉まない。そんな人間が輝く世の中って、夢あってえぇ~やん。

読者の方々には、「自身の心の縁石を踏み越えろ!」が響くだろうか……? 以上、今回は良書のススメでしたぁ~。

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