第62回:砂子塾長の熱血ドラテク持論

※ この記事は2022年にRevspeedコラムで掲載された記事です。
この夏の大ヒット映画と言えば「トップガン・マーベリック」と「ジェラシックワールド・新たなる支配者」。すでに劇場で見た読者諸君も多かろう。そのジェラシックワールドの前作から登場した、ヴェロキラプトルのブルーの赤ちゃんが登場するのだが、子供が生まれたっちゅー事はブルーに雄のお相手がいる? なーんて思った方も多いはず。
これが違うんです。ブルーはブルー独りで卵を作り産んだのです。「えっ???どゆこと?」ラプトルのブルーには無性生殖の特性を持つオオトカゲのDNAが組み込まれていたのです。つまり異性との交配をしなくても子供ができるわけなのです。実はこれはトカゲやヘビ、カエルなどに多く実在しており、種の保存の為の合理化とも言える特性でもあるようだ。この場合、ラプトルのブルーの子は完全に自分のコピーを産み出したということになる。
さらに面白いのは魚のクマノミ。クマノミはイソギンチャクの中に複数のグループで生活しており、そのグループの中で1番大きく成長したクマノミのみが性転換して唯一のメスとなり、2番目に大きなオスとペアになり産卵するそうです。なんとも不思議…。
人間界では「ジェンダー」なる言葉がメディアでも出ない日はないほどである。今回のテーマはそう!「女性」。
レース業界では2017年からスタートした関谷さんがプロデュースする競争女子シリーズはもう説明の必要はなかろう。あるようでなかった女性限定レース。他のスポーツでは当たり前の区分けだが、ことモータースポーツの世界ではなかった。
女性ドライバーの日本での活躍は1963年の日本GPですでに存在しており、B-1クラスで6位の塚本育子選手やC-IVクラス8位、原田敏子選手などモータースポーツ草創期から登場していた。
バブル期にはタレント女性ドライバー鮎川麻弥さんや高島礼子さん、岡本かおりさん、そして今や大先生になられた三原順子さんなどが活躍した。その中で唯一、この世界でプロとして稼ぎ今でもクルマで飯を食っているのが佐藤久実ちゃんだ。同世代であり、付き合いも長く先日も砂子塾のゲスト講師に来てもらった。
JGTCから現スーパーGTには過去5名の女性ドライバーがスポット含め参戦していた。岡野谷選手、三原選手、井原選手、シンディ・アレマン選手に佐藤久実選手。久実ちゃんは女性ドライバーとしては最多の26戦に出場し、キャバリエ、セリカ、MRSなどのマシンで活躍し、なんとニュル24時間などでは「玉を取られた」男性ドライバーも多数らしい。笑 現在はTOYOTA GAZOO Racingのインストラクターとしても活躍中なのだ。
体力、特にGフォースが重くのしかかるフォーミュラではやはり女性は厳しいと言われている。2014年全日本F3 Nクラスで女性ドライバーとしての日本モータースポーツ史上初優勝したのが三浦愛選手だ。
そして今シーズンのフォーミュラ・リージョナル(FRJ)のもてぎ戦では小山美姫選手が全3レースでポールtoウィンを果たした。FRJといえば富士のラップタイムは1分37秒台、100RのGフォースは3Gにも迫るマシンだ。小山選手も彼女が10代の頃からTVCで教えた経緯もあり、競争女子では負け知らず。そして世界で活躍する女性が大集合するWシリーズにも参戦した。
彼女はとにかくジム通いが日課。「生きてて24時間中23時間くらいつらく厳しい。でも速く走れた一瞬の喜びの為に生きている」と。小山選手の首や腕周りは、そんじょそこらの針金くんは到底太刀打ちできない。
一方で女性ドライバーはスポンサーを獲得しやすいなどと言う風潮を聞くが、実際は様々な苦労を伴うだろうし、獲得したが継続や成績や人付き合い、そんなに楽な話ではなかろう。
「オレもクマノミになって競争女子に出たい〜」などと戯言ほざいてる場合ではない。油断は禁物。ミラーに写るヘルメット下になびく黒髪にインを刺される事になる。

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