第60回:砂子塾長の熱血ドラテク持論

※ この記事は2022年にRevspeedコラムで掲載された記事です。
我々、人間・ホモサピエンスの言葉の起源「homo」はラテン語で人を指し、「サピエンス」は知恵のある。という意味があるそうだ。
現在、地球上には1種類の我々しか「人」はいない。しかし、3~4万年前にはネアンデルタール人が生存し、一緒にホモサピエンスと共存していた。ネアンデルタール人の絶滅の理由は研究者の間で結論は出ていない。
骨格や筋肉量などはホモよりも大きく、それなりの文化もあったネアンデルタール人(以降・ネアン)の人工減少へ向かった理由のひとつが、小集団で生活し、集団同士は孤立していた事が原因との説があるそうだ。
これは遺伝的多様性がホモと比べても少ないという結果にも紐づいているのかもしれない。
「寄らば文殊の知恵」
凡人どおしであっても、3人目の意見を聞けば発見や進展がある。という意味だが、ネアンはまさに小集団どおしの孤立したスタイルが絶滅を促した可能性があるというのだ。
さて、本題に入ろう。GWのスーパーGT富士ラウンド。
天候に恵まれ多くのファンがグランドスタンドを埋め尽くした終盤にアクシデントは起こった。
関口スープラに迫る高星Z。ストレートでスリップに入る高星。ピットに入る300マシンAPRのスリップをも使う関口。
そしてもう1台の300スローマシンがイン側に、関口は左へ進路を、まさにスリップから抜け出す瞬間の高星が300スローマシンを避けるため左にステアするもコントロールを失い、ガードレールへとクラッシュしてしまった。
幸い凄まじいアクシデントにも関わらず大きな怪我人はなかった(飛び散ったパーツでスタンドのお客様が軽症)のが不幸中の幸いだ。
翌日のネットでは、関口バッシングの書き込みがそりゃもう酷いのなんのって・・・ま、注目を浴びるプロスポーツの世界。これも宿命と言えよう。ただ気持ちえぇもんじゃないからね。匿名の言いっぱなしはフェアじゃない。
では、関口は高星を「ハメタ」のか?誓って言うが、それはない。劣勢だった関口はそもそもスリップからイン側を獲られたくないのでイン側を走行する。そこに300スローマシンがいるのだから自動的にスリップっぽくなってしまう。
関口が300マシンをかわし左へステアし始めた瞬間、高星はイン、つまりは右へ行きたいはずだが、そこに300スローマシンがいたってわけで、なおかつ左ハンドルである事もスローマシン確認の遅れとなってしまった不運だ。
では、関口に責任はないのか?ん・・・ないと思う。はい!もしあるのであれば、レースディレクターのジャッジでペナルティが課されるが当然、そしてペナルティはなかったのだから。
しかし・・・
このコラムでもたびたび言葉として上がる「危険感受性」、そう!これをみんなが共有すべきなのである。
関口選手には、「これは確かに危ね~よな・・・少し配慮が足りなかった」って思って欲しいし、高星選手には今後は同じシチュエーションでも少し左右に出て、ストレート上の景色を確認しよう。と、考えて進歩していけば良い事。
お互いの信頼の元にギリギリのバトルをし、それが大前提のスリップストリームなのだ。
危険因子は速度差であり、信頼が失われるイレギュラーが発生する事。ドライバーが考える想定内でなければならない。
24年前の富士を思い出す。今回のクラッシュ後のGTA、FROそして富士オフィシャルの対応の迅速さは24年前から飛躍的進歩を遂げ、奇しくもマシンや各デバイスの安全性をも証明する出来事となった。
何か有事が起きると事なかれ主義の日本。蓋をするのではなく・・・。
24年前はJAFが蓋をしようとした!事実、我々当事者達になんの聞き取りも行わずに報告書は発表されたのだ・・・。
しっかりと検証し、事実をみんなが共有し、さらにディスカッションしセカンドオピニオンを聞く。
これがホモサピエンスとして生き残っていくために必要な手順だ。
孤立は破滅へと向かうのだから。ね、ロシアさん・・・。

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