第59回:砂子塾長の熱血ドラテク持論

※ この記事は2022年にRevspeedコラムで掲載された記事です。


わりと仲の良い女性友人との会話だった。

「へぇ~ 登山行くんだぁ~ 」

その女性が登山することを初めて知って、登山好きのオイラも興奮ぎみで話を返した。

「オイラも好きで・・・」
「こないだここ凄かったんよ! 」

と、断崖絶壁のクライミング写真を見せた。

「凄! ! ! 凄! 怖! ! 笑」

その女性は普通に写真に興奮して会話は盛り上がった。

しかし!これ・・ちょっと待って・・・。これって、もしかしてマウンティング? 笑
意識し過ぎかもしれないが、「あれ? 今、マウントした? 」と、自分自身で感じてしまったのだ。

ようするに自分のほうが多く山に行っていて、あなたが行かない危険な箇所も登ってますよ的な。

このマウントという言葉はここ最近多く聞かれるようになった、SNS界隈から発生した言葉である。

でもさ・・・これ、普通の会話やん! 山好き同士が話しているだけで、その女性がどう感じたかによるのかと・・・。

いちいちそんな事も気にせねばならん昨今か。勿論、相手の事を思いやる気持ちは当たり前なのだが、世間の風潮に感度高すぎもどうなの? って思ってしまう。

仕事の現場で上司が、または親が子供に言ってはいけない言葉が

「これ、前にも言ったけど・・・。」

だそうだ。でも、前にも言ったを再度言わせるはめになったという認識を相手や子供に持たせるべき。と思うのは俺だけか? 厳し過ぎる考えであろうか?会社で女性社員に

「お! 今日はお洒落だね~ 」
「ひょっとして今夜デート? 」

こんなんもセクハラと呼ばれるやっかいな時代。しかし、言葉ひとつで、伝え方ひとつで、人生が良くも悪くも転がる事例は多々ある。また、それがフェイスTo フェイスなのか、電話なのか、はてまたLINE でのやりとりなのか。

1997年GTでの話しである。ホノレーシングの故・金子監督から星野さんのル・マン参戦の代役でカルソニックスカイラインへ乗らないか。の誘いで2日間の富士でのテストを終えた。その後、金子監督から電話をもらい・・・。

「いや、スポンサーがダメって言ってるんだよね・・・。」
「えっ? なんでですか? 」

ようはクビだと言いたいようだ。その真相は電話でのやりとりが問題となったらしい。ようは生意気だと言われた。俺は良かれと思い、

「契約は・・・契約は・・」

と金子さんに電話で何度も言ったのだが、金子さんからすれば

「いくらもらえるんすか? 」にしか聞こえなかったようだ。笑

「みんな黙って乗るんだよ。」そうとも言われた。

自分の本当に伝えたいことを伝える力や言い方、表現も非常に重要である。ましては表情が見えない電話やサーキットでの無線も!

これは、とあるチームの話し。そんなに若手ではないが、まだまだペイペイ感が否めない中堅ドライバーが大きなチャンスでシートを掴んだ。そのテスト中の無線で

「あ~ ピット入るよ~ 」

無線を聞いたチーフエンジニアは当然、そのドライバーより年齢が10個以上も年上であった。で、

「なんだ、その口の利き方は・・」

になったわけである。
無線では、なるべく簡潔、簡略に伝えるべく、通常敬語はあまり使わないのだが、状況によってはそうでもない場合も考えねばならない。

勿論、このケースはそのドライバーの普段の所作にもコミュニケーションとして足りない部分もあったのかもしれない。

フェイスtoフェイスであれば言葉を聞かずとも、怒っているのか、喜んでいるのか、悲しんでいるのかは分かりやすい。非言語と言われる目、表情、身振り手振りで伝わるものだ。

伝える能力。これはレースの現場でもエンジニアとドライバーの間で成績をも左右する重要な課題。いつ、どこで、どんな症状かを重要度に合わせて伝えていく。そこは単純に言葉だけでない非言語的熱意アピールも必要である。

そして、今全世界が高らかにあげねばならない言語は「No War 」&「Peace 」である・・・。


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