第44回:砂子塾長の熱血ドラテク持論

東京バーチャルサーキット [TVC] 誕生秘話

左・テムズ川 中央・シルバーストーンサーキット(サーキット内にもSimトレーニング施設がある) 右・お馴染みビックベン

日本には、まだレーシングシミュレーターというものが、ほぼ存在しておらず、シミュレーターでドラビングをトレーニングなんて、概念すらなかったその当時。

そのオープンから、さらにさかのぼること、4ヶ月前。単身イギリスの田舎町バンベリーに4日間ほど滞在していた。目的はシミュレーター先進国の現状視察だった。

バンベリーには、イギリス人でアストンマーティンのワークスドライバーを務めるダレン・ターナーが運営するベースパフォーマンス社があり、数日そこでシミュレーター体験はもちろんのこと、多くのシミュレータートレーニングの実情を見させてもらった。

左・ベースパフォーマンスSimulator開発のアストンマーティンワークスDr。ダレン・ターナー 右・ヒースロー空港

その初体験は衝撃だった。

「これは凄い!」

「まったく本物のドライビングと変わらないじゃん!」

重いブレーキ、ステアリングから伝わる路面、タイヤの状態、アンダーステア、オーバーステア、視界全面を覆う大型スクリーンに映し出された鈴鹿サーキットは、本物と変わらぬ光景だった。

そして多くのフォーミュラ・ルノー、F3などの若手ドライバーからジェントルマンドライバーまでもが、チームのエンジニア同行でトレーニングしている実情。

「やべぇ……」

「日本、また遅れているよ」

エンジニアは、ドライバーのサーキットでの具体的なコーナーでの癖や傾向を確認し、セッティングに役立てる。またギアレシオなどの確認も行っていた。

バンベリーからクルマで東に小1時間で聖地シルバーストーンサーキットがある。そのサーキット内にもシミュレーターショップがあり、そこでもトレーニングの様子を見学させてもらった。

そこにはアイトラッカーが常設!

アイトラッカーとは、ドライバーの視点を観察する装置で、もう8年以上前の話だが、トレーニングに活かされていたのだ。

日本で高価なものであるためか、このアイトラッカーをトレーニングに導入しているところは、いまだ皆無。ここまで書けば、日本がシミュレータートレーニングで、先進国に対して、いかに遅れているか、おわかりいただけるだろう。

余談だが、バンベリー滞在中、中華、イタリアン、日本食と日ごとにチャレンジ。よ~くわかったのは「イギリスに美味いものなし」(笑)。よくいわれるが、本当だった。

最後の夜に食べたフィッシュ&チップスだけがまともだった。シミュレーターでは遅れる日本だが、食べ物クオリティは世界ナンバーワンである。

2012年2月に日本初のレーシングシミュレーター・トレーニングジムとしてオープン。

その後、日産の育成プログラムであるNDDPやトヨタのTDPにもTVCが採用された。また、ヨーロピアンF3のエンジンサプライヤーである東名エンジンがノリスリンクのレース前にTVCでテストし、ギアレシオやマップ調整に役立てて、見事、表彰台を獲得している。

日本のレース業界を大きく前進させたTVC。延べ1万人ものドライバーをトレーニングしてきた。数回ドライビングを見れば、そのドライバーの癖、やらねばならないトレーニングの内容はすべてわかる。

ブレーキリリース波形のトレーニングはマストだ。TVC砂子塾長トレーニングメソッドは、この8年間で確立し、多くの実車での成果を挙げることができたのである。

本物にこだわり、996ポルシェをぶった切ってつくったシミュレーター、本物のフォーミュラ・コックピットを再現したシミュレーター、日本唯一の7mの大型スクリーン、そのインパクトから多くのメディアも取材に訪れてくれた。

時代は刻々と変化し、VRが進化。そして、小型であっても、そのクオリティを維持可能なシミュレーターへの変換期がやってきた。

より濃密な砂子塾長パーソナル・シミュレーターレッスンへ。必ずアナタを速くしてみせます!

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